

2026.09.03
皆さん、こんばんは!
今日は一流選手に見られる「クワイエットアイ」についてお話をします。
試合中、目はどこを見ているでしょうか。
▼相手の顔。
▼手。
▼足。
▼身体全体。
競技によって見る場所は違いますし、同じ競技でも状況によって変わります。
しかしスポーツ科学では、見る場所だけではなく、「動作をする直前に、視線がどのような状態になっているか」についても研究されています。
そこで知られているのが、「クワイエットアイ」と呼ばれる現象です。
クワイエットアイとは、簡単にいうと、「重要な動作を始める直前に、特定の場所へ視線が安定している時間」のことです。
名前だけ聞くと、「目を動かさないこと」のように感じますが、単純に一点を凝視すればいいという話ではありません。
例えば、
▼ゴルフのパッティング。
▼バスケットボールのフリースロー。
▼ダーツ。
▼射撃。
▼サッカーのペナルティキック。
こうした正確な動作が求められる競技で研究されてきました。
クワイエットアイについて複数の研究をまとめたメタ分析があります。
そこでは、熟練者と初心者を比較すると、「熟練者のほうがクワイエットアイが長い傾向がある」ことです。
さらに同じ人の中でも、「成功したときのほうが、失敗したときよりクワイエットアイが長い傾向があること」が報告されています。
つまり、一流の選手は身体の使い方だけではなく、「動く直前の目の使い方」にも違いがある可能性があるのです。
面白いですよね?
考えてみたことはありましたか?
理由については、まだ完全に解明されているわけではありません。
ただ、クワイエットアイには、
▼必要な視覚情報を集める。
▼注意を適切な場所へ向ける。
▼これから行う動作を脳が準備する。
▼余計な情報に注意を奪われにくくする。
といった役割があると考えられています。
私たちは動く瞬間だけを見て、
▼反応が速い。
▼判断が速い。
と評価しがちです。
でも、その直前に脳がどれだけ適切な情報を集められているかも、実際の動作に関係している可能性があります。
さらに興味深い研究があります。
バスケットボールのフリースローを使った研究では、時間的なプレッシャーやパフォーマンスへのプレッシャーを加えると、クワイエットアイが短くなったり、視線を固定するタイミングが遅くなったりすることが報告されています。
時間的なプレッシャーがかかった条件では、シュートの正確性も低下しました。
つまりプレッシャーがかかったとき、
「気持ちが焦る」だけではなく、「目から情報を取り込む方法まで変化している」可能性があるのです。
以前の記事では、
▼緊張すると視野が狭くなる。
▼試合中にセコンドの声が聞こえなくなる。
といった現象を取り上げました。
今回のクワイエットアイも、それらと少しつながっています。
プレッシャーが強くなると、人間の注意は変化します。
いつもなら自然に拾えていた情報が入らなくなったり、逆に必要のないものへ注意が向いたりすることがあります。
だから本番でいつもの動きができない理由は、「技術を忘れたから」だけではないのかもしれません。
その技術を出す前の情報収集の段階から、普段とは違う状態になっている可能性があります。
ここは注意が必要です。
クワイエットアイが長い人ほど優れたパフォーマンスを示す研究があるからといって、「一点を長く見れば強くなる」とは言えません。
クワイエットアイの研究は、ゴルフや射撃など、自分のタイミングで動作を始められる競技で多く行われています。
一方、格闘技では相手が常に動きます。
▼パンチが来る。
▼距離が変わる。
▼フェイントが入る。
一瞬で状況が変化します。
必要な視覚情報もまったく同じではありません。
だからクワイエットアイという研究結果を、そのまま格闘技に当てはめることはできません。
それでも、
▼上手い選手は何を見ているのか。
▼いつ見ているのか。
▼どのくらい視線を安定させているのか。
という視点は、とても興味深いものです。
一流選手と初心者では、
▼筋力。
▼スピード。
▼技術。
▼経験。
さまざまな違いがあります。
でも研究を見ると、「動く直前の視線」にも違いがあることが分かっています。
上手い人は、ただ速く反応しているのではなく、「動く前に必要な情報をうまく拾っている」のかもしれません。
パフォーマンスを決めるのは、身体が動き始めてからだけではない。
その直前、
▼どこを見て
▼何を拾い
▼脳がどんな準備をしているのか
目には見えにくいその一瞬にも、強さのヒントが隠れているのかもしれません。