

2026.08.27
皆さん、こんばんは!
今日は研究から見る疲労感の正体について話したいと思います。
「もう動けない。」
「限界だ。」
激しい運動をしていると、そう感じる瞬間があります。
▼呼吸は苦しい。
▼身体は重い。
▼筋肉にも力が入らない。
当然、
「身体のエネルギーを使い切ったから限界になった」と思いたくなります。
しかし、疲労についての研究を見ると、それほど単純ではありません。
私たちが感じる「もう無理」という感覚と、身体が完全に力を出せなくなることは、必ずしも同じではないのです。
運動による疲労には、大きく分けると、
「筋肉側で起こる末梢性の疲労」と、「脳や神経系が関係する中枢性の疲労」があります。
筋肉では、運動を続けることで収縮能力そのものが低下します。
一方で、中枢神経系から筋肉へ送られる指令にも変化が起こります。
つまり、「疲れた」=「筋肉のエネルギーが空になった」という単純なものではありません。
実際、疲労の原因は運動の種類や強度、時間、環境などによって異なり、一つの仕組みだけでは説明できないことが研究でも指摘されています。
運動科学では、「自分がその運動をどれくらいキツいと感じているか」を「主観的運動強度」、RPEと呼びます。
例えば、
▼まだ余裕がある。
▼かなりキツい。
▼もう続けられない。
という本人の感覚です。
ただの気分のように思えますが、実はそうではありません。
複数の研究をまとめたレビューでは、身体的な疲労だけでなく、運動前に精神的に疲れている場合でも、その後の運動を「よりキツい」と感じやすくなり、持久系パフォーマンスが低下することが報告されています。
興味深いのは、パフォーマンス低下を説明する共通した生理学的変化が必ずしも見つからない一方で、
「運動がいつもよりキツく感じる」という変化は比較的一貫して見られたことです。
つまり、パフォーマンスを考えるうえで「どう感じているか」も無視できないのです。
もう一つ興味深い現象があります。
長い運動の最後になると、さっきまで限界だったはずなのに、最後だけペースを上げられる。
そんなことがあります。
いわゆる「ラストスパート」です。
もし「限界=筋肉が完全に力を出せなくなった状態」なのであれば、最後に出力を上げられることは説明しにくくなります。
運動中のペース配分には、
▼今どのくらい疲れているか。
▼あとどのくらい続くのか。
▼これまでどれくらい動いたのか。
といった情報も関係すると考えられています。
だから、
▼あと30秒。
▼最後の1ラウンド。
▼残り10回。
と終わりが見えることで、もう一度出力を上げられることがあるのです。
一時期、疲労について、「脳が身体を危険から守るため、限界になる前にブレーキをかけている」という考え方が注目されました。
これは「セントラル・ガバナー・モデル」と呼ばれています。
ラストスパートなどを説明する興味深い考え方ですが、現在も議論が続いており、「疲労はすべて脳が決めている」と考えるのは適切ではありません。
実際には、
▼筋肉の収縮能力。
▼代謝。
▼体温。
▼心肺機能。
▼脳や神経系。
▼主観的な努力感。
▼運動の種類。
さまざまな要因が組み合わさって、疲労やパフォーマンス低下が起こると考えるほうが自然です。
ここはとても重要です。
疲労感に脳が関係しているなら、「気合いで無視すればいい」という話ではありません。
身体から届く疲労のサインには意味があります。
特に、
▼暑さ。
▼脱水。
▼体調不良。
▼強い痛み。
こうした状況で無理に押し切ることは危険です。
強さとは、身体からの警告を無視することではありません。
ただし、「苦しいから、もう絶対にできない」とも限りません。
ここは競技をする人にとって面白いところです。
▼苦しい。
▼心拍も上がっている。
▼身体も重い。
それでも、
▼あと30秒ならできる。
▼もう一度なら動ける。
ということがある。
「疲労を感じること」と「能力が完全になくなること」は別なのです。
「もう限界」
そう感じた瞬間、身体が完全に力を失っているとは限りません。
運動による疲労には、筋肉だけではなく、脳や神経系、主観的な努力感、運動時間や環境など、さまざまな要因が関係しています。
だから疲労は、身体だけの問題でも、メンタルだけの問題でもありません。
そして強い人とは、疲れを感じない人でも、疲労を根性で無視できる人でもないのです。
自分の身体から届く情報を感じながら、これはまだ進める苦しさなのか。
それとも止まるべきサインなのか。
その違いを理解できることも、パフォーマンスを高める大切な能力なのかもしれません。