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音楽を聴くと、本当に身体能力は上がるのか?

2026.10.09

皆さんこんにちは!
1日遅れの更新となりまして、失礼いたしました。

さて、トレーニング中、皆さんは音楽を聴いていますか?
ジムで筋トレをするとき、ランニングをするとき、試合前に集中力を高めたいとき。

お気に入りの音楽を聴くことで、いつもより身体が軽く感じたり、もう少し頑張れそうだと思ったりした経験がある人も多いのではないでしょうか。

実際、トップアスリートが試合前にヘッドホンで音楽を聴いている姿も珍しくありません。

では、ここで一つ疑問が生まれます。

「音楽を聴くことで、本当に身体能力は向上するのでしょうか?」

単純に気分が高まっているだけなのか。それとも、筋力や持久力といった運動パフォーマンスに実際の変化が生まれているのか。

今回は、この疑問を科学的な研究をもとに考えていきます。

音楽には運動パフォーマンスを高める効果がある

最初に結論からお伝えします。
音楽を聴くことで、運動パフォーマンスが向上する可能性は科学的に支持されています。

ただし、ここで重要なのは、音楽によって筋肉そのものが急に強くなるわけではないということです。

2020年に学術誌『Psychological Bulletin』に掲載されたTerryらの研究では、音楽と運動に関する139件の研究、合計3,599人のデータが分析されました。

その結果、音楽を聴くことには、主に次のような効果が認められました。

▼運動パフォーマンスの向上
▼運動中の気分の改善
▼主観的な運動のきつさの軽減
▼酸素消費量に関する効率の改善

特に興味深いのは、実際の運動パフォーマンスだけでなく、「運動をどれくらいきついと感じるか」まで変化していたことです。

つまり、音楽は身体の出力だけに働きかけるのではなく、運動中の心理的な状態にも影響を与える可能性があるのです。

ただし、すべての運動で同じ効果が得られるわけではありません。
研究全体で確認されたのは平均的な効果であり、個人差もあります。

なぜ音楽を聴くと、運動パフォーマンスが上がるのか?

では、なぜ音楽によって運動パフォーマンスが変化するのでしょうか。

ここには、いくつかの興味深い仕組みが関係していると考えられています。

① 疲労や苦しさへの意識が変わる

運動中、私たちの脳にはさまざまな情報が入ってきます。
呼吸が苦しい、脚が重い、筋肉が疲れてきた、心拍数が上がっている。
こうした身体からの情報は、運動のきつさを判断する材料になります。

しかし、音楽を聴いていると、注意の一部が音楽へ向けられます。
その結果、身体から伝わる不快な感覚に意識が集中しにくくなり、同じ運動でも比較的楽に感じられる場合があります。
例えば、同じ速度で10分間ランニングをしたとしても、無音の状態と好きな音楽を聴いている状態では、体感するきつさが異なる可能性があります。

ここで大切なのは、実際に身体へかかっている負荷が小さくなったとは限らないということです。
負荷そのものではなく、その負荷を脳がどう感じるかが変わっている可能性があります。
ただし、非常に強度の高い運動では、呼吸の苦しさや筋肉の疲労といった身体からの情報が強くなるため、音楽による注意の切り替えには限界があります。


② 音楽のリズムが動作に影響する

もう一つ重要なのが、音楽のリズムです。
人間には、外部のリズムに合わせて身体を動かそうとする性質があります。
例えば、テンポの良い音楽を聴くと、自然と足でリズムを取ったり、歩く速度が変わったりすることがあります。
これは運動中にも起こり得ます。

ランニングやウォーキング、サイクリングのような反復的な運動では、音楽のリズムが動作のタイミングを整える手がかりになることがあります。
一定のリズムに合わせることで、動作のばらつきが減り、運動を続けやすくなる可能性があるのです。
ただし、速い音楽を聴けば必ず速く走れるわけではありません。
自分の動作に合わないテンポを無理に使うと、かえって動きにくくなることも考えられます。
重要なのは、単にテンポが速いことではなく、運動の目的や自分のリズムに合っていることです。


③ モチベーションや感情が変化する

音楽の効果を考えるうえで、感情の変化も無視できません。
好きな曲を聴いた瞬間に気分が高まったり、試合前に気持ちが引き締まったりした経験はないでしょうか。

運動パフォーマンスは、筋力や心肺機能だけで決まるものではありません。
意欲、集中、緊張、不安など、心理的な状態にも影響されます。
音楽は、こうした心理状態を調整する一つの手段になり得ます。
特に、運動前に自分の気持ちを高めたいときや、運動への抵抗感を減らしたいときには有効な可能性があります。

一方で、興奮すればするほど良いというわけでもありません。
精密な動作や冷静な判断が求められる場面では、気持ちが高まりすぎることがマイナスに働く可能性もあります。
そのため、音楽は「テンションを上げるもの」としてだけではなく、「自分に必要な心理状態をつくるもの」として考えることが大切です。

筋トレ・ランニング・瞬発系の運動では効果が違う?

ここからは、実際のトレーニング場面を考えてみましょう。

▼ランニングや有酸素運動
音楽のメリットを比較的活用しやすいのが、ランニングやウォーキングなどの反復的な運動です。
リズムに合わせて動きやすく、運動中の退屈さやきつさを軽減できる可能性があります。
特に、運動を継続することが苦手な人にとっては、音楽によって運動そのものを楽しみやすくなることが大きなメリットになるでしょう。

▼筋力トレーニング
筋トレでも、音楽によって意欲が高まり、反復回数や運動中の出力に良い影響が生まれる可能性があります。
ただし、音楽を聴けば必ず最大筋力が上がるというわけではありません。
高重量を扱う際には、フォームや呼吸、身体の感覚に集中することも重要です。
音楽によって集中しやすくなる人もいれば、逆に注意が散ってしまう人もいるでしょう。

▼ジャンプやスプリントなどの瞬発系運動
瞬発系の運動では、運動中に音楽を聴くことだけでなく、運動前に聴くことも注目されています。
2023年に発表された、運動前の音楽に関する30件の研究をまとめたシステマティックレビュー・メタ分析では、運動前の音楽が一部のパワー指標や課題の完了時間、疲労に関連する指標を改善する結果が示されました。

つまり、音楽は運動中だけでなく、運動を始める前の準備段階でも役立つ可能性があるということです。
ただし、競技や測定項目によって結果は異なるため、すべての瞬発系能力が向上すると断定することはできません。

好きな音楽と、テンポの速い音楽。どちらが効果的?

ここは実践するうえで、とても重要なポイントです。

音楽による運動パフォーマンスの変化には、テンポだけでなく、その音楽に対する好みも関係していると考えられています。

Terryらのメタ分析では、全体として、遅い〜中程度のテンポより速いテンポの音楽でパフォーマンスへの効果が大きい傾向が示されました。

一方、運動前の音楽を調べた2023年のレビューでは、自分で選んだ音楽が、一部の心理的指標などで有利に働く結果も報告されています。

ここから考えられるのは、単純に「速い曲が最強」というわけではないということです。

例えば、アップテンポでも自分が嫌いな曲では、集中しにくいかもしれません。
反対に、少しゆっくりした曲でも、自分にとって気持ちが高まる音楽であれば、運動前の心理状態を整えるのに役立つ可能性があります。

大切なのは、運動の種類と自分の感覚に合わせて音楽を選ぶことです。

音楽を聴けば、誰でもパフォーマンスが上がるのか?

ここまで読むと、音楽は非常に優れたパフォーマンス向上手段に思えるかもしれません。
しかし、注意しておきたいことがあります。

それは、音楽の効果には個人差があり、必ずしもすべての人にプラスになるわけではないということです。
音楽を聴くことで集中力が高まる人もいれば、無音の方が身体の動きに集中できる人もいます。
また、競技特性によっても適切な環境は異なります。

例えば、フォームの細かな修正を行う練習や、周囲の音を頼りに判断する競技では、音楽が邪魔になる場合も考えられます。
さらに、音楽によって運動のきつさを感じにくくなったとしても、筋肉や心肺機能への負担がなくなったわけではありません。
気分が良いからといって、必要以上に負荷を上げすぎることには注意が必要です。

音楽は万能な道具ではなく、使い方によってメリットが変わるものなのです。

実際のトレーニングにどう取り入れるべきか?

では、これらの研究を踏まえて、私たちは音楽をどのように活用すればよいのでしょうか。

おすすめしたいのは、まず音楽を聴く目的を明確にすることです。

運動前に気持ちを高めたいのであれば、自分が前向きになれる曲を選ぶ。
ランニング中のリズムを整えたいのであれば、自分の動作に合ったテンポの曲を試してみる。
筋トレで集中したいのであれば、音楽がある場合とない場合で、実際のパフォーマンスを比較してみる。

そして、ここでぜひ試していただきたいことがあります。

同じトレーニングを、音楽あり・音楽なしの条件で比較してみてください。

例えば、同じ速度・同じ時間のランニングを行い、運動後のきつさを10段階で評価します。
別の日には音楽を聴かずに同じ運動を行い、感覚を比較します。

その際、睡眠時間や疲労状態、気温などの条件もできるだけそろえておくと、比較しやすくなります。

1回だけでは偶然の影響もあるため、何度か繰り返すことが大切です。

こうすることで、音楽が自分の運動にどのような影響を与えるのか、少しずつ見えてくるはずです。

科学的な研究は、多くの人に共通する傾向を教えてくれます。
しかし、最終的に重要なのは、その知識を自分自身の身体やトレーニングにどう活用するかです。

まとめ

今回のテーマは、「音楽を聴くと、本当に身体能力は上がるのか?」でした。

科学的な研究からは、音楽が運動パフォーマンスや運動中の心理状態に良い影響を与える可能性が示されています。

ただし、ここで区別しておきたいことがあります。
それは、「身体能力そのものが向上すること」と「今持っている能力を発揮しやすくなること」は違うという点です。

音楽を聴いたからといって、その瞬間に筋肉量が増えたり、心肺機能が発達したりするわけではありません。

一方で、運動中のきつさの感じ方や、動作のリズム、モチベーションなどが変わることで、結果としてパフォーマンスが向上する可能性があります。

つまり、音楽は身体能力を直接つくり変えるというよりも、今持っている能力を発揮するための環境づくりに役立つものだと考えられます。

そして、もう一つ忘れてはいけないことがあります。
それは、トレーニングの効果を決めるのは音楽だけではないということです。

適切な運動負荷、十分な休養、栄養、継続的な取り組み。
こうした基本があってこそ、身体能力は向上していきます。

音楽は、その過程をサポートする一つの手段です。
音楽に頼るのではなく、音楽を上手に利用する。

そんな視点を持つことで、日々のトレーニングの質をさらに高められるかもしれません。

皆さんもぜひ、普段のトレーニングで音楽の有無による違いを確かめてみてください。
自分では気づいていなかった、意外な変化が見つかるかもしれません。

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