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人は自分が思っているほど、自分の動きを正確に覚えていない

2026.09.17

皆さん、こんにちは!

日常生活を送っていて、

「うまくできたと思った。」
「いつも通り動けたと思った。」

逆に、「今日は全然ダメだったと思った。」

ところが後から映像を見てみると、思っていたほど悪くない。
逆に、できていたつもりの動きができていない。

そんなことはありませんか?

これは単に自分を見る目がないから、という話ではありません。

そもそも人間は、自分の身体の動きをカメラのように記録しているわけではないからです。
私たちが覚えている自分の動きは、

実際に起きたことそのものではなく、脳がさまざまな情報から作った感覚に近いものです。

今日はこんなテーマにしてみようと思います。

◆ 自分の身体なのに、すべてを把握しているわけではない

身体を動かしているとき、脳には大量の情報が入ってきます。

▼筋肉の伸び縮み
▼関節の角度
▼身体にかかる力
▼足裏からの感覚
▼視覚
▼平衡感覚

こうした情報を使って、

▼腕がどこにあるのか
▼身体がどちらに傾いているのか
▼どのくらい力を出しているのか

を脳は推定しています。

この身体の位置や動きを感じる感覚には、「固有感覚」と呼ばれる仕組みが大きく関わっています。

普段はほとんど意識しませんが、目を閉じても自分の腕が上にあるのか下にあるのか分かるのは、この感覚が働いているからです。

◆ 感覚は正確な測定器ではない

ただし、「固有感覚」は万能ではありません。

▼自分では同じ位置まで腕を上げたつもりでも、実際には少しズレている。
▼真っすぐ立っているつもりでも、わずかに傾いている。
▼同じ力を出しているつもりでも、実際の出力は違う。

こうした誤差は普通に起こります。

人間の脳は、身体から届く情報をそのまま読み取っているわけではありません。

複数の感覚情報と過去の経験などを組み合わせながら、「おそらく今はこうなっている」と身体の状態を推定しています。

だから主観的な感覚と、客観的な動きが完全に一致するとは限らないのです。

◆ 疲労するとズレが大きくなることもある

さらに興味深いのが疲労です。
筋肉が疲労した状態では、関節の位置を再現する課題などで誤差が大きくなることが、複数の研究で報告されています。

つまり疲れてくると、「身体が動かなくなる」だけではなく、「自分の身体が今どこにあるのかという感覚にも影響が出る」可能性があります。

本人としては、「いつもと同じように動いている」つもりでも、実「際には少しずつズレている」。

本番の後半になるほど動きが変化する理由には、筋力や持久力だけでなく、こうした感覚情報の変化も関係していると考えられています。

◆ 本番では自分の動きを細かく記憶している余裕がない

もう一つ重要なのが注意です。

本番中の脳は、自分のフォームだけを監視しているわけではありません。

▼相手
▼距離
▼タイミング
▼周囲の状況
▼次に何が起こりそうか

さまざまな情報を同時に処理しています。

そのため、
▼自分の右手がどの角度だったか
▼足が何センチ動いたか
▼身体がどの程度傾いていたか

といった情報を一つひとつ正確に記憶しているわけではありません。

後から思い出すときには、断片的な情報から、「たぶんこうだった」という記憶が再構成されます。

◆ 記憶は映像の保存ではなく、作り直されるもの

記憶研究では、人間の記憶は出来事をそのまま保存して再生するものではなく、思い出すたびに再構成される性質を持つことが知られています。

そのときには、
▼結果
▼感情
▼期待
▼その後に得た情報

などの影響を受けることがあります。

例えば負けたあとに、「今日は何もできなかった」と感じる。

しかし映像を見ると、実際には良かった場面もかなりあります。

反対に勝ったことで、「今日は完璧だった」と感じていても、映像では危ない場面がいくつも見つかることもあります。

勝敗や感情が、試合全体の記憶の印象を強く塗り替えてしまうことがあります。

◆ 感覚が間違っているという話ではない

ここで大切なのは、「自分の感覚は信用できない」ということではありません。

感覚には、映像だけでは分からない情報があります。

▼身体が重かった
▼力が入りにくかった
▼呼吸が苦しかった
▼距離が遠く感じた
▼怖さがあった

こうした本人にしか分からない情報も、パフォーマンスを考えるうえでは重要です。

一方で映像には、「本人の感覚だけでは分からない事実」があります。

つまり、主観と客観のどちらかが正しいという話ではありません。

見ているものが違うのです。

◆ 感覚と映像がズレたところにヒントがある

むしろ興味深いのは、「自分の感覚と実際の動きが一致しなかった部分」です。

▼できなかったと思ったのに、できていた。
▼できたと思ったのに、できていなかった。
▼速く動いたつもりなのに、それほど速くなかった。
▼大きく動いた感覚だったのに、映像では小さかった。

こうしたズレには、「自分が身体をどう認識しているのか」という情報が含まれています。

映像を見る価値は、単にミスを探すことだけではありません。
自分の中にある身体感覚と、実際に起きていたことを照らし合わせられることにもあります。

◆ まとめ

「自分の身体なのだから、自分が一番よく分かっている」
そう思いたくなりますよね。

でも人間の脳は、自分の動きをカメラのように記録しているわけではありません。

▼身体から届く感覚
▼視覚
▼疲労
▼注意
▼感情
▼結果

さまざまな情報から、「自分はこう動いていた」という感覚や記憶を作っています。

だから、感覚と実際の動きがズレること自体は不思議ではありません。

むしろ面白いのは、そのズレです。

▼自分ではどう感じていたのか。
▼実際にはどう動いていたのか。

その二つを比べて初めて見えてくるものがあります。

パフォーマンスを振り返るとき、映像を見ることは自分の感覚を否定するためではなく、自分の感覚を、より正確に知るためでもあるのです。

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