2025.10.09
皆さん、こんばんは!
暑さがだいぶ落ち着き、朝晩は少し肌寒い気候になりましたね。
さて、私たちは「体の声を聞く」という表現をよく使ったり耳にしたりするかと思います。
実際に、皆さんは体の声をどのくらい正確に聞き取れているでしょうか?
今日はそんなお話をしたいと思います。
身体に聞き返す感覚というのはそれは単なる感性ではなく、神経科学の分野で「インタオセプション(内受容感覚)」として研究されているテーマです。
今日は少し真面目な感じになりますよ!
インタオセプション(interoception)とは、身体内部の状態を知覚する脳の機能を指します。
心拍・呼吸・血圧・胃腸の動き・筋肉の緊張など、私たちは常に膨大な情報を身体の中から受け取っています。
この感覚を扱う領域が、脳の「島皮質(insula)」です。
ここは感情・自己認識・意思決定にも関わる領域で、インタオセプションが高い人ほど、感情の変化や体調の変動に気づきやすいことが知られています(Craig, 2002; Critchley et al., 2004)。
面白いのは、身体の状態を正確に感じ取る力と、それを正しく言語化・理解できる力は別だということ。
たとえば「心拍数を数える課題」で実際の心拍と自己認識の一致度を測定すると、自分では敏感だと思っていても、実際にはズレているケースが多く報告されています(Khalsa et al., 2008)。
つまり、「なんとなく調子が悪い」と感じることと、その原因を体の反応として正確に捉えることの間には、知覚の精度の差が存在するのです。
インタオセプションの精度が高い人ほど、感情のコントロールや意思決定の安定性が高いという報告もあります(Garfinkel et al., 2016)。
逆に、この感覚が鈍くなると、ストレス・不安・過食・睡眠障害などのリスクが上がることが指摘されています(Paulus & Stein, 2010)。
つまり、「身体に聞き返す」という行為は、感情的な直感ではなく、生理的な自己認識をアップデートする行為です。
体調・気分・集中力など、その日のコンディションを「情報」として扱える人ほど、パフォーマンスを安定させることができます。
心理学的な研究でも、身体感覚への気づきが高い人ほど、行動の一貫性が高いことがわかっています。
これは「ボディ・アウェアネス理論」と呼ばれ、運動パフォーマンス、習慣形成、ストレス対処など、多くの分野で応用が進んでいます(Mehling et al., 2012)。
要するに、感覚を磨くことは、「自分の体を知る」ではなく、「自分の選択を信頼できる精度を上げる」ことなのです。
身体に聞き返す感覚とは、単に「感じる力」ではなく、情報を受け取り、意味づける力です。
▼インタオセプションは、脳が身体の内部を読み取る感覚システム
▼その精度が高いほど、感情・判断・行動の安定性が上がる
▼感覚を鍛えるとは、自己理解の精度を上げること
「今日は体が重い」と感じたとき、それを「気分」ではなく「情報」として受け取れるようになる。
身体に聞き返すとは、自分の内側に「観察者」を育てることなのかもしれません。
どうでしたか?
いつもとは違って真面目な感じになりましたが、この記事を楽しく読んでくれていたら嬉しいです。